無痛性甲状腺炎
橋本病で低下症の症状がない人、または橋本病の疑いがある人は、
1年に1度は経過観察が必要になります。これは甲状腺機能低下症は
いつ起こるかわからないので、とても大切なことです。
また、無痛性甲状腺炎と言う一時的な甲状腺機能亢進症のリスクもありますので
その意味でも経過観察は必要になります。
無痛性甲状腺炎は、橋本病を持つ人が、何らかの原因で甲状腺が急に破壊され、
中に貯蔵してあった甲状腺ホルモンが、一気に血液中に流れてしまうものです。
なぜ破壊が起こるカなど、詳しいメカニズムはわかっていないのですが、
甲状腺ホルモンの数値が一気に上がることで、バセドウ病のような
亢進症の症状が出ます。
同じように甲状腺ホルモンが急に血液に流れ出してしまう病態で
亜急性甲状腺炎と言うものがありますが、これはかなりの痛みを伴うのに
対して、無痛性甲状腺炎はその名の通り、痛みはありません。
現れる症状は短い間に起こることが多く、動悸、体重が減る、とにかく暑い、
などが出てきます。バセドウ病ととても似ているので、間違えやすいですが、
検査をするとすぐにわかります。
バセドウ病の場合は、血液中にあるTSHレセプター抗体と呼ばれる
自己抗体が陽性になりますが、無痛性甲状腺炎はこの自己抗体が陰性です。
またメルカゾールなどの抗甲状腺薬による治療は行われません。
貯蔵されていた甲状腺ホルモンが全部出てしまうと、亢進症の症状 は
なくなります。そして今度は低下症になります。
あまりにも症状が酷いときは、それを抑える薬を服用することもあります。
ただ、亢進症→低下症の後は、数ヶ月で特に治療しなくても、8割の方は
甲状腺の機能は正常に戻ります。
残り2割の方は、そのまま低下症になると言われているので、注意深く
医師の診察を受けながら経過を診ます。また、無痛性甲状腺炎は再発する
ことも多いので、治った後も1年に1度くらいは検査を受けると良いですよ。